目次
邂逅。
俺の言葉に一瞬のけぞる小泉。
「…てことは、恭哉がタケミカヅチの継承者なのか!?」
どうやら小泉も、継承した記憶を持っているようだった。
「マジかよ……なんで、よりにもよって…」
狼狽える小泉。
かくいう俺も、平静を装ってはいるが…
「…そうだ。つまり俺は……お前を……」
さっきとは打って変わり、声が続かない。
正直、あれは俺の中のタケミカヅチが発していたように思う。
だからなんの意識もせず、なんの躊躇もない強い口調だったんだろう。
今、俺の口を通して出ているのは……テンパりそうな頭を何とか整理している、俺自身の言葉だ。
タケミカヅチの記憶や力があるとはいえ、心まで強くなったわけじゃない…
不意に始業前の学校だということに気づき、慌てて辺りを見回す。
戦うことになったら、惨事なんてものじゃなくなるぞ…
ところが……
「…誰もいない……それに、人の気配がしなくなってる」
そんなはずはないんだ。
教室の前まで来る間にも生徒はいたし、教室にも数人たむろしていた。
それが忽然と姿を消している。
タケミカヅチの記憶が告げる。
この邂逅によって俺たちは現実から切り離されたんだ。
思い切りやり合える、そういうことなのか。
だが、状況はなにも良くなっていない。
こいつとは戦いたくないんだよ。
「なあ、恭哉……これ、どうにかなんないのかな…」
やめろ、小泉……
「俺、戦いたくないよ……」
俺だって同じ気持ちだ、大親友。
その言葉を口から発することは叶わなかった。
戦いの回避を考えるのに、俺の頭はフル回転中なんだから。
それがあるのかどうか、まったく思いつかないが…
平穏。
今俺は、小泉と一緒に下校中だ。
あの後、小泉の口から突然タケミナカタの言葉が発せられた。
その内容は…
『巻き込んでしまったのは難儀だが、私はタケミカヅチに敗北を認めさせる。それまで憑依をやめるつもりはない……人の子よ』
つまるところ、俺と小泉は戦うしかないらしい。
しかも小泉が受けたのは継承ではなく、憑依だということ。
半ば永久的に、タケミナカタとその力が居座り続けるのだ。
大事なツレにそんな運命を背負わせてたまるか。
幸いこの神様は、タケミカヅチと勝負をしたくてこの手段をとったと言っている。
俺が負ければ満足して出ていき、俺が勝てば追い出せるってわけだ。
小泉と戦う……考えたくもないが…
「結局俺たち、戦わなきゃいけないんだな……恭哉と勝負とか、笑えるし」
苦笑いを浮かべる小泉。
「……とにかく、それは七日後まで忘れよう。」
タケミナカタが消えた後、俺たちは取り決めを行った。
決戦は逃れられない、だったら最後の最後まで先延ばしにしよう、と。
その時が来るまで、今まで通りバカやろう。
…ってな。
俺たちは一週間、いつも通りに過ごした。
特に語るほどのこともない、平凡な日常。
その間、あの事は話題にしなかった。
とはいえプレイ中のゲームには、例の神様がキャラとして出てくる。
お互いの神様の名前を口にしては、俺たちは苦笑いを浮かべあった。
そして七日後…
その日を迎える。
決戦。
「小泉、準備はいいか?」
「うん、大丈夫!イケる!!」
俺も小泉も、準備万端だった。
「さあ、盛り上がって参りました!!いよいよ決勝戦、Aブロック代表、タケミカヅチ使いの麻生くん!」
登壇する俺。
電気屋のおじさんの実況に対し、歓声が沸き上がる。
そのほとんどはうちのクラスの同級生だ。
「対するBブロック代表!タケミナカタ使いの小泉くん!!」
俺と反対側の階段から登壇する小泉。
再び沸き上がる歓声、全く同じ面子だ。
「泣いても笑っても一発勝負、俺はタケミカヅチとなってお前を倒す!!」
「いやいやいや!歴は俺のが長いし!!恭哉には負けんよ!!」
俺たちは互いに威勢を張り合い、スマホのセットされたテーブルへと向かう。
ここはアメノヒダマファイターズの地区大会。
そう、神様の代理戦争はeスポーツで決着をつけることになったんだ。
『……人の子よ、勝負方法は任せる。とにかく我は、タケミカヅチを負かしたいだけなのだ。』
あの日、タケミナカタは宿主の小泉にそう続けた。
それを聞いた俺は、近所の電気屋で開かれるローカル大会のことを思い出し今に至る。
突拍子のないことに巻き込まれたかと思えば、なんというかこう…
平凡な決着で終わろうとしている。
とはいえ、負けるつもりはない。
正直、ゲームは小泉の方が上手いんだけどな。
あいつは俺の師匠だぞ?笑えるぜ。
部外。
『強大なる力を継承したというのに、それを微塵も行使せずに戦を治めるとは……時代も変わったものよの』
祀られた巨大な土偶が声を発する。
ここは個人経営の電器店、その倉庫。
初老の男性が土偶に近づく。
「はっはっ……アラハバキ様ほど永く生きておられても、この結末は思い浮かばなかったですかな?」
男は朗らかに笑い、布を取り土偶の腕部を磨き始めた。
『うむ、昔のように相撲でも取るものと思うておったが……現代は奇妙。しかして愉快!』
土偶から放たれたその言葉は、愉悦に満ち満ちていた。
~あとがき~
そんなわけで少年タケミカヅチの続きをお送りしたぞ( ´∀`)フォッフォッ
なんちゅーか、書いておって色々矛盾に気づき、ちょいちょい書き直したわい(・ω・)
この辺り、キャラ設定しっかりしておらんから生まれる問題なんじゃよな;
実はこの物語、発端はツイッターに上げた文字数ギリギリのネタでのう。
それがこちらじゃ!
ベッドで寝っ転がってたら突然窓から布都御魂剣が飛んできて触ってみたらタケミカヅチの力を継承することになって学校に行くと親友がタケミナカタの力を継承してたから嫌なのに戦うことになって決戦の日は七日後と定まったのでその間は仲良く過ごして最後の日に
eスポーツで決着をつけたい( ´∀`)
わしのネタツイートより。
とりあえず、物語にすると決めた時点でツイートは消したのじゃがの( ´∀`)←
ちゅーかこれ、本当はもっと短くする予定だったのじゃ!
それこそいつもの長い前置き、くらいのつもりで書いておったが…
導入部だけでかなりの文字数になってのう。引っ込みがつかなくなっとった←
とはいえ、なんとか形になってよかったわい( ˘ω˘ )✨
相変わらずの駄文じゃが、誰かの暇つぶしにはなると思う。(身内とか)
おかしなところがあったら、是非お便りをくだされ!(コメントでも良いぞよ)
さてさえ、ではこの辺でお暇しよう。読んでくれて本当に、本当に感謝なのじゃ( ˘ω˘ )✨アリガトネ
鬼崎がお送りしたぞ!さらばじゃ!!( ´∀`)ノシ
コメント