ノイマンは、外観を注意深く観察していた。
遺跡……そう呼ぶには、あまりに無残な建造物と化したモノ。
天使を模したと思しき石像は頭部の箇所のみ破壊され、美しかったであろう壁のレリーフも糞尿に塗れていた。
そして…
「…監視している奴がいるな。手を出してこない所を見ると、明らかに委縮している」
遺跡の高台には魔物が潜んでいる。しかしノイマンの放つ異様な気配に気圧され、攻撃を仕掛けてくる気配はない。
それならばと、遺跡の内部へ急ぐノイマン。
内部は一本道だった。所々壊れた天井から光が漏れているため、足元にも不自由はない。
しばらく進むと、回廊はまるで劇場のような広間に繋がっていた。
ノイマンが不敵にも部屋の中央に飛び出すと、天井から声が響いてくる。
「なんだお前は。むさ苦しい男を招待した覚えはないぞ?」
重低音を響かせ、しかし流暢に人語を話す魔物と思しき影。
天井から地面へゆっくり降りてくると、目の前に炎の玉を出現させる。
炎に照らされ、徐々に姿が目視できるようになった。
その顔は蝙蝠のような外見をしてはいるものの、体は人間のような姿であった。
「……黙って娘を返せ」
静かに言い放ち、辺りに目をやるノイマン。
少し離れた前方に女性が倒れている。
「おい、娘は無事なんだろうな?」
「当たり前だ。これから大事な儀式をする所だからな?」
卑しい表情を浮かべ、舌なめずりする魔物。その顔を見、ノイマンは剣を抜く。
「ならいい、もう喋るな。」
言うが早いか、ノイマンは斬りかかった。が、魔物は紙一重でかわす。
「無駄なことよ……ククッ」
その後も斬撃を繰り出し続けた。
並みの魔物であれば、一刀のもとに斬り捨てているほどの鋭さを持つ斬撃。それが悉くかわされてしまう。
「(こいつは……ふむ、間違いない)」
「間違いない?その通りだ」
ノイマンが思った事に対し、魔物は反応してくる。
「…やはりな、貴様は私の思考を読んでいるのだろう」
悟り……相手の思考を感じ取り、反応する能力。魔物が持っているような能力ではない。
「魔族ということか……面白い」
にい、と笑ってみせるノイマン。
「クハハ、何がおかしい……む!?貴様、今何をした!!?」
ノイマンの思考を感じ取ろうとした魔族の男が、困惑し始めた。どうしたわけか、思考が全く読めなくなったのだ。
「何をした、とは変なことを言う。お前を倒す戦術を練っているだろう?ほら、思考を読んでみろ」
「馬鹿な!!全く読めないだと……そんなはずはない!!」
戦術を練りながら話しているノイマンだが、男はその思考を読むことが出来なくなっていた。
「…読めるはずもないだろう。その力は自分より魔力の劣る相手にしか発動せんからな」
「なんだと……ただの人間が上級魔族たる俺を上回る魔力を…」
「もっとも……私の魔力ではないが」
言葉を交わした後、ノイマンの体が闇に包まれていく。
「な、なんだそれは…その存在は…!!!まさか」
驚愕し、震え立つ男。それを一瞥したノイマンはつぶやいた。
「……準備はいいな、ニムロデ(※)」
すると闇に包まれたノイマンの姿が、みるみる形を変えていく。
その姿は黒衣を纏った魔族のようである。背丈は倍ほどに伸び、筋骨隆々の腕には剣が握られている。
「全力でかかってもよろしいので?
…駄目に決まっている、私の体と遺跡が消滅してしまうからな。
では稽古をつける程度の力で」
ノイマンの口から別々の声が放たれる。片方は、明らかに異なる声で返答している。
ノイマンとニムロデと呼ばれる者、一人の体で二人が話しているのだ。
その状況を見、慌てふためき戦闘態勢に入る魔族の男。
「…参りますぞ、坊ちゃん」
そうつぶやくと、ニムロデを纏ったノイマンは男を目掛け疾走り出す。
その動きはまるで物理法則を無視するかのように、地面を滑るように進んでいった。
繰り出された右手の剣は男の首を捉え、その漆黒の影は静止する。
左手には、すでに男の首が握られていた。
「おやおや、あっけないことで……全く、これなら体操の方が運動になりますな。
…私としては楽でいいのだが。ありがとうな、ニムロデ。
やれやれ、坊ちゃん一人で片づけられる相手だというのに…。
…まあ、それはそうなのだが。時間をかけていられんからな」
一つの口で交互に会話していると、徐々に姿が戻ってゆく。
「さて……娘を連れて帰らねば」
ノイマンは、女性の無事を確認すると足早に遺跡を出た。
外に出た瞬間、二体の魔物が襲い掛かってきた。
しかし肩に女性を抱えたままのノイマンは避けなかった。
避けもせず、剣も抜かず、魔物の頭を拳で殴りつけた。
魔物は絶命し、もう一体は恐れをなして逃走する。
「…高台で震えていればいいものを。命を粗末にしすぎだな」
絶命した魔物に軽く目をやり、ノイマンは村へ戻っていった。
鬼崎じゃ( ´∀`)ノ
髭の騎士、どうじゃったかのう。即興で書いたから、所々変な文になっとるかもしれん;
なんちゅーか、たまにこういうネタを書きたくなるんじゃよな。
いつもは前置きのネタということで、コンパクトな感じに抑えておるのじゃが( ˘ω˘ )
あと村に帰ってからの話もあるのじゃが、まあ一区切りというところじゃて。
なぜ娘はさらわれたのか、肝心なところを書いておらんが……それはまた次にでも( ´∀`)フォッフォッ
とりあえず…
すっきりしたわい(・ω・)
さてさて。長々とヘンテコな話を書いたというのに、ここまで読んでくれた方には感謝しかない( ˘ω˘ )アリガトネ
さらばじゃ!( ´∀`)ノシ
※……ニムロデとは、ノイマンと命を共にする上級魔族。その正体は、魔族の魔力を魂ごと体に取り込もうとし、その過程で死んだ術師のなれの果てである。
ノイマンのことを坊ちゃんと呼ぶ。
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